「愛別離苦」

「愛別離苦」

6月19日(月)

 訃報は突然にやってきました。当社株式会社マツバラ3代目社長であり、現会長である叔父松原光好さんの突然の他界。こちらドイツの時間では16日金曜日23時少し前頃、日本時間は朝5時台の従兄からの電話、既に癌との告知は受けていましたので、その時間帯の電話に既に覚悟を決めて応対しました。しかし、日本を出る前、非常に元気であり、久しぶりに社員さんの前にも顔を出していただけていましたので、急な出来事に本当に動転してしまいました。

 会長は私にとっては単なる叔父、前社長という間柄ではありません。私は幼少時、母が大病をして長期の入院をしており、その間会長夫妻の所に預けられていました。幼稚園の入園式、卒園式、記念写真は叔母の写真でした。つまりは、私にとっては、会長は育ての親でもあります。また、私たち夫婦の仲人でもあります。会社では3代目社長として本当に多くの足跡を残されました。その中でも、今では当社の主力事業である加工分野(大平工場)の立ち上げに特に注力されました。鋳造分野では世界的には今では当たり前のようになっているスクロールコンプレッサーの心臓部となるスクロール鋳物の開発に世界で初めて成功されました。世界中でどこも出来なかった鋳物を会長の方案の経験による発想で可能にしました。開発後、世界中から当社の工場に見学に来られ、その技術はあっという間に世界に拡がっていきました。「見せなきゃいいのに」、私はそう思っていましたが、「社会のお役にたてるのであれば見てもらったらよい」、常にこの発想が会長の発想でありました。今では、環境に配慮した鋳物つくりは当然のことですが、当社が日本環境経営大賞受賞、経済産業省環境優良工場表彰、ISO14001認証取得 など環境配慮型の鋳物工場に社会に先立てて転身していったのは会長にはその先見性があったのだと思います。そのおかげで、フランスのコンプレッサーメーカーとお取引をさせていただくことが出来ました。時にタイの洪水などの影響で日本経済が大きく落ち込んでいる時期だったので、鋳物の受注面でも大きな下支えとなり、立ち上がったばかりの大平工場を軌道に乗せるには非常に重要な取引となりました。そして「環境の基本は6Sにあり、またそれは同時に安全の基本でもある」というのが会長の口癖で、その分野では業界でも第一人者となられ、日本鋳造協会の安全衛生環境委員長も長く務められました。その後、協会では監査等の役員も務められました、また岐阜県鋳物工業会の理事長としても長きにわたりその職務に当たられました。

 また、非常に温厚なお人柄でお客様の協力会、銀行の協力会など多くの団体でも役員を務められました。特に趣味のカメラ技術を活かし、どの団体でもカメラマンとして多くの写真をお仲間に送られてきました。

 こうしたマツバラという会社を通した社会への貢献、お役に立つという姿勢を貫いた公職への貢献、どんな場所でも「ご縁と友情」を大切にし続けた姿勢、人生の中での様々な光好会長の「心の姿勢」が認められ、天皇陛下より旭日双光章を叙勲させていただけることが出来ました。これは、私の個人的な思い出はありますが、会長の奥様(私にとっては育ての母でもありますが)の名前は旭子といいます。双とは「二つで一組になるもの」という意味であり、旭子と二人で一組になって、日輪のように光り輝く章なのだと、陰で支えた奥様の力も一緒に表彰された叙勲であったと感じていました。

 この会長の訃報に接したとき、既に私はドイツにおりました。そして、単なる出張という滞在でなく、日本鋳造協会のドイツ派遣団の団長という立場で来ています。「帰国する」。こうしたことも迷いましたが、そこで考えたのが「会長が喜ぶ行動(判断)は何か」ということでした。恐らく、会長が最も喜ぶ行動は、個(会長)よりも公を優先することだと考えました。会社からも、従妹を始めとする親族からも、帰国を望む声は一つも決まれませんでした。そして、副社長をはじめとする会社の仲間たち、兄を始めとする親族の皆さんがしっかりとした判断を続けていただくことが出来ています。

本日お通夜、明日告別式という流れです。

場所は 関市総合斎苑 わかくさ

住所 岐阜県関市西本郷町5丁目1-11

電話 0575-21-6611

 通夜告別式は近親者で執り行い、後日お別れの会を開催させていただきます。

 本当に寂しい限りです。顔を見て最後の別れをすることは出来ません。本当に愛別離苦そのものです。それでも、会長が一番喜んでくれると思う判断をします。会長、本当に有難うございました。どうかゆっくりお休みください。天国に行きましたら、創業者おじいちゃんと、2代目社長父に思い切り褒められてください。本当にマツバラの歴代社長として、誇れる実績を残されたと思います。会長の残された足跡は、多くに人の心の中に生き続けていくことは間違いありません。本当に有難うございました。心からご冥福をお祈りいたします。

社長 松原 史尚

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