「東北工業大学訪問」

「東北工業大学訪問」

 10月17日(火)

 昨日のことになりますが、この先共同研究をさせていただく東北工業大学を同じく合同で研究していただく山形大学立花先生と訪問してきました。担当いただく多田淳教授は大学の後輩でもあります。なんとマスター時代は当社重野部長の後輩だそうで、多田先生からは「重野先輩」という声が聞こえました。

 まだ具体的に何をしていくという明確な方向性は決まっていないのですが、当社が30年に渡り進めてきた臭いに対する様々な取り組みを先ずは紹介させていただきました。確実に臭気は減っているけれども、そもそもその匂いの原因は何であったのか、そして現状どう変化したので匂いがしていないのか、そのエビデンスが全く取れていません。当社が取り組んできた臭いとの戦いは複数あり、解明しなければならない課題は多くあります。従ってテーマも無数に出てくると思われます。

 多田先生の専門分野はESR(電子スピン共鳴法は、Electron Spin Resonance の英語名からESR 法と略称されます。ESR 現象は、1945 年にソ連の物理学者Zavoisky がCu2+のESR 吸収の観測に初めて成功し、その成果はソ連の物理学会誌に発表されました。現在ESRの適応範囲は物理・化学・工学・医学・薬学・地学など、ほぼすべての分野にわたっています。物性の鍵となる電子スピンを検出する唯一の計測法です。(島田愛子さん(株)JEOL RESONANCE 2017年11月2日公開よりお借りしました。)つまりは、この仕組みを使用していけば悪臭のもとになっているだろう窒素と水素の結合体が如何にして分解されていくのか解明されていくと思います。その他にも、今後バイオコークスを製造していく上で、木材を如何に効率的に乾燥し、炭化させていくかといった研究にも生かしていけるのではないかとも考えています。

 多田先生には、学内もしっかりご案内いただきました。多田先生も立花先生も私も(私はなんちゃってですが)化学の分野にいます。最近では全国的に化学を目指す人が少なくなっていると聞きますが、是非多くの学生さんに化学者を目指してほしいと思います。化学こそが産業界の中心にあるのだと私は考えています。いつも話すことですが、産業の発展は人類の「困った」を解決することで生まれていくものです。例えば、鋳物工場の「臭い」は絶対に解決しなければならない課題なのです。それを解決していくのは化学者です。当社が臭くない工場という取り組みで業界の先駆けができるのも、当社には多くの化学者が存在し、そしてそのうちの多くが博士にまでなっているという現実があるからです。そして、良い職場環境が出来れば、この産業に従事してくれる人も増え機械や電気、電子の仕事も進んでいくのです。最近では、我々の業界にもAIやロボットが加速度的に導入されてきますが、この分野のエンジニアたちが仕事に従事できるのも働く環境が整っていてこそです。また、バイオコークスを進める上でもそうです。このバイオコークスの製造に成功すると恐らく当社だけでも1日に40トンからの木材を必要とすると思われます。この木材、成長の早い木材を選択することで二酸化炭素の吸収を大幅に増やすことが出来ます。つまり我が国が排出権取引でも大きく成長する礎になるのです。その上で燃料として活用した後に排出される二酸化炭素を回収し、その二酸化炭素と水素を組み合わせることで、人口ガソリンが生成されていきます。この人口ガソリンは既にヨーロッパでも認められ、二酸化炭素排出換算にはカウントされないことになっています。水素の製造についての研究は進んでいますが、如何に二酸化炭素を回収するかはまだまだ先行きが見えておらず、当面はこうした溶鉱炉からの回収を目指すのが方向性だと思われています。従って、悪の元凶とも言われる我々の産業が我が国のカーボンニュートラルをけん引することになるのです。また、成長の早い木材で林業をすることで、山の治水力を上げ、山崩れなども防ぎ、「防災・減災」にも大きく寄与するのです。また、木材の合板への活用も考えられると思われます。つまり建築学にも寄与するでしょう。今一度思い出してみてください、これら全ての産業を循環させ「人間社会の困った」を解決していく始めの一歩はバイオコークスの成功です、つまりは化学なのです。つまりは全ての産業のバインダーになっているのが化学なのだということです。長い道のりにあるかもしれませんが、世に偶然なしです。今回の多田先生、立花先生との研究は必ず素晴らしい未来を導いてくれると思います。何にしろ、再び重野君と多田先生が一つの方向性に向けて研究を進めていく、そこに川島さんや関口君も絡んでくる。この取り組みは、多くの支援が同業社、国からも得られると思います。「化学最高」です。一緒に化学しませんか。そのように大声で言いたくなる出張でした。立花先生、多田先生、ありがとうございました。

社長 松原 史尚

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