「悠之抱幽石」

「悠之抱幽石」

1月19日(金)

 今日は朝一番でブログを書いています。昨日創業者である祖父が夢枕に立ちました。以前にも紹介した掛け軸に加え、最近ご縁がある方に祖父の写真を頂戴し、その写真をどうするものかと悩んだ結果社長室に置かせていただくこととしました。その結果、毎日祖父の書を見、そして祖父の写真を見るのでそんな夢を見たのかもしれません。しかし、私には心を打つ話を祖父がしてくれたので、その夢を忘れてしまわないうちに綴っておこうと思ったのです。

 今一度、掛け軸は「悠之抱幽石」というもの。「抱幽石」とは仏教用語の白雲抱幽石を引用したもので、祖父が父によく話していたことでした。白雲抱幽石とは白雲が立ちこめ、石を包み込んでいる状態のことを言い、時には、世俗を離れて本当の自分と向き合う時間も大切だということです。祖父は父に「忠康、延びっぱなしの芋虫を見たことがあるか。芋虫は縮むから前に進めるのだ。」と。悠とは辞書には「精神的にゆったりしている様子」と書いてありました。幽石とはどっしりと構えるほどの大きな石、それを俗世(四苦八苦の世界=思い通りにならない世界)と表し、悠(精神的にゆったりとした心)が思い通りにならないこと=課題を解決していくのだということを言っています。また、悠は物理的には遠い時間・空間を表すとも辞書には書かれていました。白雲は瞬時に現れて瞬時に消えていきますが「悠」を使用することで、心の余裕を永遠に持ち続ける大切さを示していると思われ、「白雲抱幽石を抱く」を更に超えていく領域なのかと思います。社是を「精研」と決めた祖父の心が感じ取れます。精研とは、精錬と研磨とを重ね合わせた造語です。精錬とは、世界の部品素材を支えることができる企業として「鍛え抜かれている」という創業者の願いであり、研磨とは、世界の部品素材を支える企業としての技術、知識を日々高度なものにするために努力、磨き上げていくという姿勢です。

 こんな思いを込めて、祖父が語り始めた第一声「史尚、良い社員を持ったなあ。凄い会社になってきた、感謝せなあかんぞ。まあ、大変な時代やで、注文がないのは仕方がない。ただなあ、心配するな、遠からず注文はいっぱい入って来るで。鋳物はいつの時代も絶対に必要なもんや。絶対になくならん。しかし、ちょっと鋳物づくりの現場はしんどいわなぁ。世の中、人もだんだん減っとるし、人手不足も当然だわ。しかし、そんな中で人が入って来る会社になっとる。夏までにも、またたくさん、若い人が入って来る。会社の雰囲気がええわなあ。鋳物は欲しいけど、人おらんけりゃ造れんで、お客さんも今は全部が悪いで見え取らんけど、冷静になりゃ、人持っとる会社が一番安心できる。また、設備投資も最高のタイミングで出来たわなあ、今やっとったらエライことや、会社潰しとる。また、この設備が上手いこと働いとる。生産性も上がっとるし、これも大変なことやで、月に1650トンしか出来んか、2000トン出来るかは大きな違いや。また、手間んかかる仕事を嫌がることなく社員が一生懸命造ってくれとる。感謝せなあかんなあ。ただ、手間かかる分だけ儲かるで、暇でも赤字になっとらへん。これも凄いことやなあ。こんなすげえ会社、今に一気に注文も来るで。そう心配せんでもええ。ただなあ、自分でやったと思ったらあかんで。全部、みんな社員がやってくれたもんやで、感謝せなあかん。おめえは、毎日、ありがとう。ありがとう。って笑っとけ。忠康にもよう言ったけどなあ、縮まん芋虫は前行けんで。ゆったり構えとけ。心配するな、ええ~会社になっとるで。」そんな風に話して、毎日仏壇にお経を上げているからなのか「いつもありがとな」とい話して消えていきました。

 何ですかね、ここの所暗いニュースも多く、日本経済も大変なことになっているのに、株価は上がり続け、メディアは正しい情報を伝えず、政治家は「今だけ、金だけ、自分だけ」みたいな話ばかりで、考え方がずいぶんネガティブになっていた気がします。そんな中でスッキリする話でした。ご縁というものは存在しますね。掛け軸を頂いた縁、写真を頂いた縁。そんな思いが、じいさんを枕元に立たせてくれたのかもしれませんね。綴りながら、涙が出てきました。そうだね、おじいちゃん、いい会社になってきています。「負けてたまるか大作戦」、しかしちょっとゆとりを持って、そして社員さんに感謝しながら、進んでいきたいと思います。今日から笑顔でね。

 さあ、週末です。

 Have a great weekend. See you next week.

 皆さん、良い週末を。

社長 松原 史尚

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